『GameSet!!』
スタジアムに響く歓声と共に、ひとつの試合が終わった。背後の黒色のモニターに大きく映されていたのは、白衣に、額帯鏡に、ズボン…つまり、勝者であるファイター、ボクの姿。
「ふう…。」
勝利の余韻を噛み締める暇も挟まれず、背景が真っ白になって切り替わる。
次に着地した場所は、さっきと変わって、静かな小道。雲のない、どこまでも続く青空の下、青々とした緑の中。さらさらと、穏やかな風が吹いている。
ここは、連戦を終えたファイター達の休憩所。遠くに噴水やベンチも、設けられてる。もう何度も通った通過点だ。
まだ、試合は終わってない。
まだ、次のファイターが待っている。
用意されていたハートの器を手に取って、新しくなった身体でもう一度、すーっと深呼吸をする。
倒したファイター達のフィギュアの並びを横目に、次の試合の為のワープ装置へ、小道の先へと向かう。やがて白い光が見えてくる…はずだったけど…
……その手前に、誰かいる。
「あれ?……ピーチ姫?」
ピーチ姫とはもう戦った。それなら、ボクに用でもあったのかな。でも、本来、ここに誰かがいるなんて…そもそも、戦ったファイターが待っているなんて、滅多にないことなんだけど…
その姿に近付くと、どうやら、違う人だ。
綺麗な金色の髪の毛に、銀色の王冠が乗っかっている。青色の長いドレスから肩が見えていて、手には小さな星の杖。足元は少し浮いているようだけど、ボクよりも背が高くて…もしかして、ピーチ姫よりも、高いかな。
なんだか、不思議な雰囲気の人だ。
こっちに気付いているのか、いないのか、静かに遠くを見つめていた。何を見ているのかはわからなかったけど、ずっとそこだけを見ているようだった。
すると、その人の後ろ側から、見慣れない、小さな黄色い生き物が飛んできた。
「あっ!ドクターだ!」
空に浮かびながらくるくると、ボクのまわりを回った。
「はじめまして!ボクは、ドクターマリオ!キミは、なんだかきらきらしてて綺麗だね!あの人のお友達?」
くりくりした目が、ボクを覗く。
「うん!でも…ちょっと違うね!」
「えっ?違う?それ、どういう…」
「それは、この巡りのドクターなのだから。」
「わっ!」
さっきの人だ。…音も気配も感じる前に、目の前に距離を詰められたみたいだ。さっきまで遠くに見えていた横顔と変わり、正面。片方の目は髪の毛で隠れていて、もう片方の目は、綺麗で、不思議な…深い、青色。
何かをお見通しみたいな、そんな雰囲気がして、思わず視線を反らした。
「ごめん!気付かなくて。…キミは、不思議な感じがするね。さっきも、瞬間移動、したの?ねぇ、キミはだれ?どうして、ここにいるの?キミも、戦うの?」
見上げるボクが話し終わると、静かに目を閉じた。
「わたしは…あなたと違う巡りからたどり着いた者。ここへと引力が作用したのです。」
聞いたことのない、言葉ばっかり。
「ボクと違う巡り?引力?それって、何?」
きょとんとするボクをそのままに、続けた。
「それらは、巡り同士を、わたし達を結びつけるもの…これは偶然ではなく、繋がりでもあるのでしょう。」
…ますます、わからないや。
「うーん…えっと…キミの言う事、難しいね。ボク、よくわからないけど…きっと、ボクが知らないような、すごいところから来たんだよね!」
その人は、また空を遠く見つめた。
「あなたの存在も、この巡りも…どこまでも喜びと明るさに満ちています。悪しき物が存在しない、遊び場のような場所…。全ての者が、幸福に満ち溢れているのでしょう。」
もしかして、見つめている先に何かがあるのかなと、同じ場所を見た。青空と緑がどこまでも広がっているいつもの光景で、変わったところはなさそうだったけど…。
「ごめん、キミの言ってること…よくわかんないけど…でも、ここは楽しいよ!きっと、キミもこの世界のどこかにいるんだよね!ボクらの試合、見てるの?」
「試合…。」
ふと口にした言葉だったが、はっとして思い出した。
「あっ!そうだった!ボク、今は試合の途中なんだ!待たせちゃうから、また、あとでね!」
軽く手を振り駆け出して、そのままワープ装置へと向かった後に、白色の光に包まれる。
背景が忙しく切り替わり、次のステージへ。青空の元、空に浮かぶ船の上。そして次の試合がはじまる、その前に。
「あなたに、星くずの恵みがあらんことを…。」
「え?」
振り向いた空には、虹がかかっていた。
「ドクター、どうしたの?」
次の対戦相手が、目の前で待っていた。
赤い帽子に、同じ青い瞳で。
「…あっ、ううん、何でもない!」
ちょっとした瞬間があった後、にこっと口元を嬉しそうに上げた。それを見て、ボクも同じ表情になる。
ボクも相手も、準備万端の構えをして。
「ふふ。ドクター、待ってたよ!次はボクが相手だ!」
「うん!いくよ!マリオ!」
地面を踏み込み、力をこめた。

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